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2009.12.26

栗本薫よ、安らかに眠れ(2)

運命の子―グイン・サーガ〈129〉 (ハヤカワ文庫JA)
「運命の子―グイン・サーガ#129」
栗本薫は、オタクがオタクと呼ばれてなかった頃の時代の寵児だったのかもしれない。
彼女の持ち合わせていた感性は、そのジャンルのオタク(もしくはフリーク)が欲していた
ニーズと見事にマッチしていました。
いや、彼女の興味あるジャンルにおいて、彼女が提供した作品群は、当時ニーズが高かったと
言うべきでしょうか。

金田一少年や名探偵コナンがなかった頃の一般少年探偵推理小説然り、ボーイズラブなんて
言葉がなかった時代で、先駆と云えば「風と木の詩」ぐらいしかなかった時代の「JUNE」での
仕事然り、時代小説然り、ヒロイックファンタジー然り、ラブクラフトと水滸伝の融合然り。
彼女は次から次へとそのニーズを具現化したのです。けど、それは皆が欲していたからではなく、
彼女自身がただ書きたかったから(笑)彼女は自分の内なる世界の理想を表現したかったのだと
思うので、もし誰かが既にそれをやっていたら単なる読者でよかったのかもしれない。
でも、誰よりもうまく具現化出来るのは自分自身だったから、激しい消耗戦に突入したのでしょう。
もう十年、インターネットの普及が早ければ彼女はネットの寵児にもなれたかもしれませんね。
グインサーガなんか書き下ろしが文庫ですから、金が目的で量産していたとは思えません。
原稿用紙であろうがWEBであろうが、彼女には表現する場さえあればよかったんじゃないかな。

僕にとって栗本薫は決して文章のうまい作家ではありませんでした。確かに綺麗な文章は書けるし、
プロットがあるとしたらその発想は、至極魅力的だったので素晴らしいものだったでしょう。
そのプロット通りに事が運べば素晴らしい作品も生まれたことでしょう。
プロット通りに事が運べば・・・。少なくともグインは完結していた(苦笑)
けど、そうはならない。冗長な形容が延々と続くし、筆も流れる。特に晩期はひどかったですね。
ソリッドな文章に推敲出来れば、名作が生み出された筈なのに。
でも、良くも悪くもそれが栗本薫だったし、そんな栗本薫をフリークは愛したのです。
僕だって栗本薫だったから。暴言を吐きつつここまで付き合ったのです(笑)

僕は、このグイン・サーガ129巻をまだ読んでいません。
そして、今月には130巻も出るらしいです。
僕には、まだ読んでないグイン・サーガが2冊もある。
その幸せを解ってくれる方々とだけ、その向こうにある寂しさを分かち合える気がします。
「あーあ、薫ちゃん、そんなに早く逝っちゃダメだよ。」

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