2006.08.02
僕の魂の10冊[01/10]
僕に中上健次を薦めたのは、友人の師匠1962さんでした。
僕は「岬」を先に読んだか「枯木灘」を先に読んだか今となっては憶えていませんが、とにかく打ちのめされました。
文章に怖ろしく力がありました。
主人公の内面描写、生き様に切り込んでいくような表現は、中上健次本人のレーゾンデートルと真っ向から対峙するかのように潔く真摯に感じました。
熊野三部作を覆う空気は常に重く暗いのですが、その筆致に邪を挟む余地もなく僕は本当にやられました。
僕が純文学たる純文学を読めなくなってしまったのも、全ては彼のせいです(笑)
氏の作家としての圧倒的な力と資質と、志の高さだけは、氏が早世されていなくなった今でも僕の心の中でかなり大きな部分を占めています。
後に村上龍は「『枯木灘』からはるかに低い位置に僕がいることはわかっている」と書いてました。
僕は村上龍のことも好きですが、それを読んだ時、「当たり前だろう!」と吠えたくなったのを覚えています。
中上健次と僕の誕生日は同じ。中上健次の16年後に僕は生まれました。
僕は16年先を走る中上健次に一歩も近づけないまま彼は逝ってしまいましたが、せめて彼の志の高さに仇なす表現については、いつでも牙をむこうと思ってます。