« | »

2010.03.08

最後のマンガ展


先週大阪へ行った大きな目的のひとつは、これでした。
井上雄彦 最後のマンガ展 重版〈大阪版〉サントリーミュージアム
入場券は、三鷹ジブリの森(行ったことない)かっ!と云いたくなるような日時指定。
写真左のミュージアムの外貼りを撮影していると、同様に前方で撮影されていた女性二人組は、
撮り終えてから「よし!」と叫んでミュージアムに向かいました。気持ちは解る。
みんな大阪港の駅に着いた時から、一乗寺下がり松に向かうような静かな熱気と緊張を抱えている
のでしょう。
以下ネタバレを含みますので、畳んでおきます。
個人的及び主観的な感想なので、気分を害される方もおられるかと思います。
続きを読まれる場合は、ご了承の上、自己責任でお願いします。

美術館内に入ると既に長蛇の列。日時指定なのにこれだけの人数となれば、それも納得。
みんな静かに息を潜め順番を待つ。普通、美術展なんてのはネタバレとか怖れず、本物の作品を観る
喜びに溢れているもんだけど、今回はチト訳が違う。みんな、その先に何があるのか知らない。
井上雄彦が突きつけてくる回答がどのようなものか、不安と期待の入り混じった妙な緊張感が、
列全体を支配している。正直言って、この時点で疲れた(苦笑)
やっと順番が回ってくると4人づつエレベータに乗せられる。エレベータを降りたら始まり。

内容は全て「バガボンド」。武蔵の最後の一日。すべて書き下ろし。
ほとんど漫画の生原稿と思えるものから、和紙に墨と筆で描かれたものもあり大きさもマチマチ。
大作は2メートルくらいのものが何枚もあったり、途中通路の壁までキャンバスになっていたり、
素材や画材、自由自在で制約無しの世界が繰り広げられています。
ガラスの向こう側ではなく、かなり間近で観られます。さすがに触れてるバカはいませんが、
ギリギリまでOKです。そこまで近づいてスクリーントーンだと思ったら手描きのアミだったり、
凹凸など、気になる部分を確認することが出来ます。僕は漫画家のタマゴでもないし、そういう
テクニカルな部分を気にする必要もないのですが、井上のペンや筆を魂と見立て、ぶつけてくる
渾身の絵を観るにつけ、どうしても引き込まれて、そうなってしまうのです。僕だけじゃなく、
来訪者の多くの方々も。後半、魂に刺さった最後のトゲは、そのトゲの影までリアルに描かれて
いたのですが、通り過ぎたらカミさんに「釘だ」と耳打ちされました。戻って見直すと、最後の
トゲはクギが打ち込まれていました。影は会場のライトの影。そりゃリアルだ(笑)
でも、僕はそれに気づかないぐらい、その時点で疲れ果てていたんです(苦笑)

日時指定チケットで入場制限をしているので、それなりに落ち着いて観れるのですがそれでも
混んでいるため係の方が「自分のペースで進んでくださーい。前の方を追い越してもかまいま
せーん。自分のペースで前に進んでくださーい。」と複数個所で何度も叫んでいます。
あれは、大きなお世話なのでやめた方がいい。集中の妨げになる。うるさい(怒)

マンガ展、最初から惹き込まれたけど、前半はまだ冷静で、僕はこの内容がマンガ展で
良かったと思いずっと見続けていました。これが「バガボンド」最終回でなくマンガ展で
あることに感謝していました。これがもし最終回だったら僕は失意のうちに井上雄彦と訣別
せざるを得ません。それは展示内容に不満があったからでなく、そういうものなのです。
井上雄彦も、最終回にこれを描く訳にはいかないと云うのは解っていたので、こういう
展示会にしたのだと僕は確信しています。
僕は展示内容に不満があるどころか、数回心や涙腺を揺さぶられました。
だって、絵を見に行ってるのですよ。でもマンガ展だからネームだけのコマ割もあって、
「大丈夫?武しゃん」ってだけ、いきなり出てくるんですよ。
ありゃ反則だろう、井上!(怒)
思わず涙が落ちそうになりますよ、僕以外の98%の来訪者は。

もう、そんなこんなで本当に疲れた。ボロボロに疲れた。
でも、井上雄彦が真摯にペンや筆を剣に見立て、魂に見立て描いた作品群です。
観る方がそれだけの体力を消耗しても観る価値は存分にあります。
僕は、このマンガ展を観に行くことが出来て本当に良かったと思います。
そして、マンガ展の最後で、最終回に向かう「バガボンド」への気持ちの整理もつきました。
読者の気持ちの整理がついてもどうにもならないのですが(笑)
井上さん、巌流島の一瞬の刹那、あんたの好きなように描けばいいと僕は思います。

Trackback URL

Comment & Trackback

No comments.

Comment feed

Comment





XHTML: You can use these tags:
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">