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2008.02.05

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身
容疑者Xの献身(著)東野圭吾
読了しました。
本書の内容に抵触(ネタばれ)しますので、折り畳んでおきます。
また、個人的及び主観的な感想なので、気分を害される方もおられるかと思います。
ご了承の上、自己責任でお願いします。


東野圭吾氏の直木賞受賞作品です。でも、それまでに受賞していて然るべき作品が積み
重なっていて、その帳尻合わせをした感がある受賞なので、これが氏の代表作かと言えば
違うと思いますが、本作品の筆力や文学に向かう志の高さなどを鑑みても素晴らしい作品
だと僕は思います。
富樫が殺されたのは3月9日であることを伏せて、話は展開していきます。
3月9日であったことは、終わりの方で解る訳ですが、これが仕掛けになっています。
視点をずらしている。ってのは死体のすり替えと思われがちですが、作中に出て来る
警察にとってはそうであっても、読み手にとってはそうでなく、読み進めるに従い、
与えられた情報だけを鵜呑みにしてしまうことを逆手にとっています。
倒叙モノと云われますが、正しくはそれだけではないわけです。
でも、トリックとか仕掛けとかに寄りかかっている訳ではありません。
そして今作品では情景描写も極力簡潔になっています。
そして、東野圭吾の作品には案外多い、あまり感情移入出来ない登場人物(苦笑)
そんな設定の中で淡々と綴られる展開に引き込まれます。
ただ、誤解されがちだと僕が感じるのは、石神が「なぜそこまでするのか」です。
ここまで深い無償の愛は存在するのかということに視点が向けられがちですか、著者は
それほどまでは愛を唄う目的はないのではないかと僕は思ってます。
では、それは何なのか?
天才のプライドですね。ここでは、例えばP≠NPであるプライド。
男はそうでなけなければ面白くないし、東野圭吾もその辺りを察しているからこれだけ
書けるのだと思います。圧倒的な筆力を以ってして。
文学の向こう側や、ミステリーの頂点を極めるような作品ではないですが、掛け値なしに
面白い小説であり、各所に散りばめられた彼の信念に唸らされる作品だと僕は思います。

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